就活生は採用サイトを眺めてないでIR(投資家情報)を隅から隅まで読め

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2017.08.18
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就活生は採用サイトを眺めてないでIR(投資家情報)を隅から隅まで読め

タイトルがすべてです。

就活をしている学生の方は採用サイトや各種ナビサイト(〇〇ナビなど)、掲示板などで企業の情報を集めていると思います。
「企業はどういう学生を求めているのか」「将来どのような事業を展開していくのか」
そういった就活に重要だと言われている情報を良いことばかり並べられた採用サイトや、情報元(ソース)が定かでない掲示板に書かれているまま鵜呑みにしていませんか?
正直に言って、それだけでは準備としては浅いですし、誤った情報をインプットしているかもしれません。

例えば採用サイトによくある「社員の一日」というコンテンツ。

朝、爽やかに出社して、メールをチェックしてミーティング。同僚とオフィス周辺でおしゃれなランチ。翌日のプレゼンの準備を終えたら定時で退社。帰宅前に以前から気になっていたバルで一杯。

こんな優雅でキラキラ生活してる会社員は残念ながら多くありません。(少なくとも私は違います)

日本で普通に働くなら多くの企業で残業がありますし、毎日やる気に満ち溢れて出社できるかと言われればそうではありません。
理想と現実は概して異なるものです。

「私たちは順調に成長しています」「スケールの大きなことをやってます」「世の中をより良くする仕事です」
採用サイトやナビサイトに書かれているのは率直に言って着飾った情報です。
そうは言ってもさすがに嘘は書いていないと思います。さすがに
そしてこれらの情報は抽象的で本意がどこにあるのかがわかりづらいことがあります。
それでは「その企業が何を伝えたいのか」「その企業はどこに向かっていこうとしているのか」をどのように知れば良いのでしょうか。

企業の本音を知りたいならIRを読め

「IR(Investor Relations)」とは投資家に対して発信する情報です。
就活生が気になる企業の多くが株式会社なのではないでしょうか。株式会社では当たり前ですが株主がいます。
IRはそれらの株主に向けた企業の経営に関する情報が記載されています。大企業ならほとんどの場合Webサイトに専用ページがあると思います。
投資家はこの情報を基に株を売るのか、買うのか判断します。

IRに含まれる企業の決算報告では売上や利益がいくらだったかを発表します。当初の目標よりも決算での数字がずれてしまった場合、その要因や今後の対策を投資家に向けて発表するのが一般的です。
もし目標よりも実際の数字が下振れてしまった場合には「〇〇の事業が想定より鈍化したので、今後は〇〇に〇〇をして補強をしていきたい」というようにネガティブなことでも発表がされます。
この発表を受け「これ以上の成長はないな」「方向転換で業績が回復するかもしれない」といった判断を投資家は行っていきます。

IRは綺麗ごとを並べておけば良いといったものではなく、ポジティブなこともネガティブなことも積極的に開示していくというのが一般的な企業の姿勢です。(もちろん戦略的に情報を開示しないということもありますが)
そうすると採用サイトに書かれている抽象的な情報もIRを合わせて読むことでより具体的な、就活でも使える情報になるのではないでしょうか。

IRから見る全日本空輸株式会社(ANA)

東洋経済の「就職人気ランキング」では全日本空輸株式会社(以下、ANA)が総合1位になっています。(2018年卒を対象とした前半の順位)
そこで今回はANAがどういう方向を目指していくのか採用サイトIRを基に見ていきます。

注意

  • ANAを対象として選んだのは意図があるわけではなく、ポジショントークでもありません。あくまでもランキングが1位だったからということをご理解ください。
  • 私なりに資料を読んだ所感を書いていきます。ANAの本来伝えたいこととは異なることもあります。必ずご自身で正確な情報をご確認ください。
  • この記事を読んだからといってANAに採用されるということは決してありません。就活の結果についての責任は一切取ることができません。
  • 本末転倒かもしれませんが、ANAの採用サイトには様々な情報がかなり詳しく書かれていて、以下の題材を探すのに苦労しました…

ANAの言う「価値創造」とは具体的に何か

採用サイトのいたるところで「価値創造」という言葉を目にします。この言葉がANAにとって重要なキーワードのようです。
ANAは航空旅客を通して利用者に価値あるサービスを提供する企業です。その結果として企業が成長し企業価値が上がっていきます。
それではどのように価値を創造していくのか、IRページにある「アニュアルレポート 2016年3月期」を見てみましょう。なお「アニュアルレポート(annual report)」とは年に1回、財務状況や経営方針などを発表する資料です。

このレポートの中でも「価値創造」という言葉が繰り返し出てきます。会社の経営方針が決まり、それに合わせて採用方針が決まるからです。
代表取締役社長の片野坂真哉さんはレポート内で価値創造のサイクルについてこのように言っています。

例えば、グループの中核である航空事業において、国内線では需給適合を推進し、収益基盤として揺るぎない地位を固めていく一方、国際線を成長ドライバーとして事業を拡大させ、さらなる企業価値の向上を目指すという戦略の方向性は不変です。
世界中のすべてのお客様をダントツの品質でおもてなしする一方、観光立国・地方創生など、政府の重点政策に貢献することによって、自らも成長しながら企業価値を高めていくことが可能となります。
国内では地方都市の人口減少や伝統産業の衰退も懸念されていますが、日本の価値を世界に発信し、地方経済の維持・向上にも貢献することで、航空事業の成長に結び付けていきたいと考えています。

ANAを志望している就活生で「世界を股にかけて仕事をしたい」と思っている方は少なくないのではないでしょうか。もちろん、ANAでそのような仕事に携わる可能性は大いにあります。
一方でANAでは価値創造のサイクルとして国内(特に地方都市)の経済や文化を守り、日本の価値を海外に発信していくことも重要だと考えています。

面接で「私は海外で〇〇をしたい」といった誰もが思いつくような紋切り型なことを言ったところで面接官の目に留まるでしょうか。(海外での仕事を批判しているということではありません。むしろしたいです、お仕事待ってます)
例えば「地方の産業を世界に発信していく仕事を〜」と言ったとしたら、「おっ!!良いね」となってくれるかもしれません。(このままでは完全にレポート内の言葉の受け売りなので、工夫してください。考えてください)

国内に目を向けることの大切さはIRを通して知ることができた一面ではないでしょうか。

グループ行動指針の「安全 Safety」とは何か

ANAグループでは行動指針を5つ定めています。ANAを受ける就活生はこの5つを暗記して面接に臨むかもしれません。
しかし、5つの行動指針を暗唱できたからといって面接を通過できるわけではありません。その背景にあるものをしっかり理解して、自分のやりたいことと合っているのかを判断し、面接で話すべきです。
この行動指針の背景に何があるのか、具体的に何をやっているのかを知るのにIRが有用です。

行動指針のひとつめは「安全 Safety」です。「安全こそ経営の基盤、守り続けます。」と採用サイトには書かれていますが、どのように安全を守っていくのでしょうか。
答えは「2017年3月期の通期決算説明会資料」にありました。この資料の7ページにこのような記載があります。

費用面について、ボーイング787型機のエンジン部品に関する不具合等を受けて、今般、グループの整備体制を強化することとしました。
作業工程の見直しも含めて、コストをかけてでも、着実に安全性を高めていきます。

ボーイングの787(以下、B787)という飛行機において不具合で出発空港に引き返したり、欠航が出たりする事象が2016年にありました
ANAはB787にローンチカスタマーとして開発段階から携わっており、今後の運用の中核を担う機材です。(2017年3月期の通期決算説明会資料の44ページを参照)
この重要な機材を中心に整備に力を入れ、安全な運行を目指すということがIRの情報から知ることができました。

IRは企業の情報の宝庫

「ESになんて書けばいいかわからない」「面接で何を話せば良いのかわからない」という就活生はIRを読んでみてください。
企業というのは経営トップが方針を決め、各部門それぞれが方針に合った施策を決めていきます。それは採用活動も同じです。経営方針が決まるとどのような人材が必要なのかが自ずと決まります。
その方針に合った人が採用されやすいというのは簡単な話です。

企業がどのような方針で経営をしているのかを知るのにIRはかなり有効なツールです。
しかし、IRに書いてるからといって、あなたの行動や考えをすべて合わせる必要はありません。
なぜなら就活において大切なのは、あなたがどんな人なのか、今後何をしていきたいのかです。
IRに書かれているのは企業がこれから力を入れていくことです。だからといってそれ以外の分野の人材を採用しないということはありません。

あなたがしっかりと自分のやってきたことやこれからやっていきたいかを話すことができれば道が開けてきます。

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